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京都天然砥石 何でも鳴滝本山産と呼ぶのは真でも偽でもなく灰色

京都の天然仕上砥石は、学術的には鳴滝石と呼ばれることもあり、仕上砥石全般に鳴滝産天然仕上げ砥石と記されていることがあり、総称 鳴滝石である事実関係上、これはあながち誤りであるとは言い難いところがあります。

京都天然砥石 大きく分けると二種類

しかし、京都の仕上げ砥石にはまず、大きく分類するのであれば、側面に見ることの出来る積層様の痕跡を見ることが出来るのか否かというところだと思います。

京都天然砥石 自然現象における偶然の重なり合いより出。日常の中に再現を見つけてみよう

さて、作業小屋の中で丸鋸を回す仕事を一日中したとします。今回は朝からしまいまで一度も掃除はしないこととします。
最後にお掃除するときに気づくことで、仕事台の周りには、大きな鋸くずがたくさん落ちて山のようになって歩くことも困難なほどたまっているはず。
鋸くずの山の周りから遠くに目をやるにしたがって、だんだん鋸くずが小さ粒子になって、ついには綿埃のようになっているはずです。
道具棚等を指で拭うと、とても細かい粒子の埃がちょっとだけ積もっていることが確認できます。

 これを踏まえて、2.5億年前のこと想像します。
静かな海底と自転による定常的な方向への海流のある環境である、ハワイ沖とかミッドウェーが、砥石の生まれ故郷です。
当時起きていたことが、作業小屋の一日で再現することが出来るということに気づくはずです。
河口に見られる三角州もこれに類します。
火山の爆発毎に、鉄分の多い堆積物が供給されることになるので、それらが析出して肌を作って行くことになりますから、木材でいうところの年輪ということになります。
年輪は、四季の巡りが1スパンとして刻まれますが、砥石の場合は火山の爆発毎ということになります。
京都の天然砥石の話なのですから、火山による1スパンとは、総ての産地の天然砥石にとって共通の時間の流れをさすわけです。
総じて、どの産地においても、あいさはやや薄く、戸前は厚い原石になります。
これらは、砥石を生成する堆積物の供給量か火山爆発のスパンを時代毎に予測する材料となります。

京都天然砥石 では、実際どう違うのか?

二種類の砥石の画像があります。
一方は、不規則に割れているもの。もうひとつは、板成りに層に沿って割れるものです。
先述の、側面に見ることの出来る積層様の痕跡を見ることが出来るものとそうでないものの二枚です。
木材でいうなら、桐とみかんのようなものです。
育つスピードが圧倒的に異なるのです。
桐は、20年もするとたんすが作れるほど大きく育つので、かつては女の子が生まれたら桐を植える慣わしがあったのも頷けます。
みかんは半世紀たっても株は15cmに満たないほどにしか育ちません。

一気に育つ砥石は、次の火山爆発まで時間がありますから、とても分厚い石になりますが、いわゆる練り物的な石になるということも意味しますから、6面総てを鋸でひきあげて製砥します。
鉄分の沈着や析出する猶予を与えることなく育つので、多くの無筋の美しい石が取れます。
砥石の原料である堆積物が積もって出来る層の方向性までもあいまいになってきており、挽き方とか研ぎ面をどこに持ってきても無難に使えるという利点があるものもあります。
結合強度がどの面に対しても散開的に分布しますから、規則性もなく割れたり、何の前触れもなく二つに割れたりするのです。

ゆっくり育つものは、絶対量の少ない選りすぐりの細かい堆積物が、僅かずつ堆積しますので電話帳か辞書の側面のような積層様の模様を見ることが出来ますが、大きく育つ前に次の火山爆発が来て肌を作ってしまうので、どうしても板成りはすこぶる明瞭でも厚さは、はるかに薄っぺらなものなのです。
頁岩/ketsugan/としての完成度は非常に高く、明瞭なへき開性を持つために、必ずこれに従って製砥しなければなりません。
鏨/tagane/を打ち込んでいるところは、キバ(あつがね)と呼ばれるところで、長石石英(SiO2水熱合成による高温高圧の熱水の存在下で結晶成長したもので、結合の弱いところで画像のように一平面に生成されており、もちろん鋼より硬く後の加工のために、鍛えて予め外しておく必要があります。

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京都天然砥石 人造砥石とはどうちがう?

人の手によるものが天然砥石に及ばないということはごく当たり前なことなのです。
研磨剤は共に長石と石英であり、ダイヤモンドを10とするモース硬度は、それぞれ6と7であり鋼よりも同等から少し硬いものです。
生地は、結晶の大きさで決まります。これは共通であると思います。
異なる点は、練り物であるか?積層様でであるかということです。
そして、積層に沿って水熱合成による結晶配列の方向性も出来ており、ある特定の製砥法で目詰まりしにくい抜群の研磨力と研ぎ感触を得ることが出来るということになります。
結合強度は、もちろん積層に沿っては弱く、本をめくるように簡単に開きます。
この面に限り吸水性もあるので、凍てによって簡単に持ち上げられて剥離するように割れます。
その分、研ぎ面に対しては強固で真っ二つになることはなくて、無理やり叩くと何枚かの薄い石になります。
山城国産の特に地図上の紫色の帯で囲った鉱脈から産す山城銘砥は、最も積層様の板成りが明瞭でありいわば海底における先の例の道具棚のようなところに位置していた鉱脈であるといえます。
中山と赤の帯に属する木津山は歩いて数分の場所にありますが、まるで異なる石が出ます。
しかし、奥殿から大突山の尾根を翻して菖蒲谷東にいたるまでの石は非常に近似しており、採取後の分別は60年の経験を持つ17代でも付かぬといいます。
正本山は総て紫の帯に属し、以下のような共通した特徴があります。
記憶しておくと、産地を偽ったものを簡単に見抜くことが出来ると思いますのでお役立てください。

  1. 肌から肌までが近しく薄いので全体的に鉱量が少ないが、積層様が明瞭であり、美しい板成り。
  2. 積層を生成するものは、選りすぐりの細かい堆積物であり、雑味もきわめて少ない。
  3. よって、長石と石英の研磨粒が積層面上において一様で規則正しく配列。
  4. 鉄分等の析出猶予も与えてしまうので、筋が多くなる可能性が高い。
  5. 研磨粒が成長しすぎたところは、刃物に大打撃!見極めて鍛える職人如何。
  6. 必ず肌か、鏨で開いた面そのままのものを残している。
  7. 質のよいものは、際立っているが稀有なので、高価。

京都天然砥石 正本山でも過酷なものがあるのは?

紫の帯の中で取れた原石総てが、板成り明瞭であるとは限りません。
 

  1. 本層を外れると、への字になったり目が渦を巻いたりするものがあります。
    渦巻きは、浅黄等の硬いものにおおく鍛えも何も効きません。
    八枚は厚い原石ですが、原石の肌に面するところで取れる薄めの二枚以外はくるくる渦巻きの石でそれはそれは厚くて大きくて美しい水色の石が取れますが、砥石としての力は望めません。
    肌が確認できない6面挽き上げの中山浅黄とかそういったものはまず中山あ!詐欺と思って間違いないと思います。
    取り方しだいでは、いくらでも大きくて立派な見栄えのが取れるということです。
     
  2. 歩留まりを上げるために、斜めの目でも無理に面付けしたもの。
    これは、研ぎ感がよろしくなかったり、硬さにむらがあるときがあります。
    地金を挽いてがりがりになることもあります。
     
  3. 大きい結晶のところや、特に癖のある結晶のところに面付け。
    積層の中で稀に大粒のところや、鋭利で層に対して鋭角に配列しているのか?地金に刺さって傷をつける地を挽くと呼ばれる層に当たった場合、難儀します。
    一見よろしくない層の見分けは付きませんが、僅かに周囲と異なることが多く、文面では説明できないところの違いがあります。なおかつ、積層間の結合は特に弱いことが通例で、容易に鍛えて外す事が出来ます。

京都天然砥石 木と石を見る眼は?

製材の木取りと石鍛えは似たようなものです。
鉋台を取るときには、山の北側で苦労して生える樫の東西方向に楔を入れて木理の言いなりに割って、北側の詰まった物が上とされます。
ひとつのログ(丸太)から、アテを見抜きいろいろな材をとらねばなりません。

山城銘砥における原石も積層上に存在する研磨粒の大きなところを外す為もしくは、弱点のところへ鏨を打ち込んで石の言いなりに開いてそこを基準に研ぎ面を作っていきます。
石鍛えは、鋸が出回っていなかったころの古代製材法に非常に似通うものがあって、対象物が木であるか?石であるかの違いのみで、とても興味深いものと思います。
 

 

 

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